玄関の上がり框(あがりかまち)は、日本の家でいちばん危険な段差です。20cm、30cm、家によっては40cm以上あり、しかも靴の脱ぎ履きで片足立ちになる場所でもあります。
ここに手すりを付けたいけれど、壁がない・壁に穴を開けたくない・賃貸で工事できない——そんなときの選択肢が置き型(据置型)の手すりです。
この記事では、置き型手すりの選び方と、介護保険での借り方を整理します。
この記事でわかること
- 玄関の段差対策の選択肢と使い分け
- 置き型手すりでどこまでの段差に対応できるか
- ステップ台の段数の選び方
- 置き型手すりは要支援1から介護保険で借りられること
- 設置するときの注意点
玄関の段差対策を比べる
| 方法 | 工事 | 介護保険 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 置き型手すり(ステップ付き) | 不要 | レンタル(要支援1から) | 賃貸・壁がない・すぐ使いたい |
| 壁付け手すり | 必要 | 住宅改修20万円枠 | 壁と下地がある |
| 踏み台(1段) | 不要 | — | 段差が小さい |
| 段差解消機(昇降リフト) | 下地工事が必要 | レンタル(要介護2以上) | 車いすで出入りする |
置き型手すりの最大の利点は、工事が不要で、しかも要支援1から借りられることです。介護保険の福祉用具貸与のうち、手すり(工事を伴わないもの)とスロープには要介護度の制限がありません。車いすや介護ベッドのように「要介護2以上」という縛りがないため、まだ介護度が軽い段階から使えます。
ここからは、実際の商品を例に見ていきます。
ステップ台の段数の選び方
この製品にはステップ台なし・1段・2段のバリエーションがあります。段差の高さを「一度に上がる高さ」に分けて考えるのが選び方の基本です。
| 上がり框の高さ | ステップ | 1段あたりの高さ |
|---|---|---|
| 〜18cm程度 | なし(手すりのみ) | そのまま |
| 18〜36cm程度 | 1段 | 半分になる |
| 36〜54cm程度 | 2段 | 3分の1になる |
目安として、1段あたり18cm以下になるように分けると上がりやすくなります。階段の1段の高さがこのくらいだからです。膝の状態によってはもっと低くしたほうが良いこともあるので、実際に上がってもらって決めてください。
「54(540)」という数字は、この製品が54cmまでの段差に対応できることを示しています。
重さ34.7kgは「動かない」ための重さ
置き型手すりで最も気になるのが「ずれないのか」という点です。この製品は34.7kgあり、体重を預けても動きません。
置き型は床に固定しないぶん、本体の重さとベースの広さで安定を作ります。軽い製品を選ぶと、力をかけたときに動いて危険です。重いことは欠点ではなく、この用具の安全性そのものだと考えてください。
ただし重いということは、設置後に位置を変えるのが大変だということでもあります。だからこそ、最初の設置位置が重要になります。
材質と設計のポイント
| 部位 | 材質 | 意味 |
|---|---|---|
| 手すりパイプ | イレクター(プラスチック被覆ステンレスパイプ) | 熱くなりにくく、冷たくなりにくい |
| ジョイント | アルミ合金 | 軽量で強度がある |
| ベース | ステンレス | 錆びにくく、重さで安定させる |
| マット | 樹脂 | 床を傷つけず、滑りを抑える |
手すりが冷たくならないという点は、実際に使ううえで大きな差になります。金属むき出しの手すりは、冬の玄関では冷たくて握りたくなくなるからです。「握ってもらえない手すり」は意味がありません。
高さと角度が微調整できる
使用環境に合わせて手すりの高さと角度を微調整できます。玄関の間口や、上がる方向(正面から/横から)に合わせられるということです。
設置時に必ず使う本人に実際に上がってもらい、握りやすい高さと角度に合わせてもらってください。福祉用具専門相談員が調整してくれます。
設置するときの注意点
- 上がる方向を決めてから置く…正面から上がるのか、横から上がるのかで最適な位置が変わります
- ドアの開閉を妨げないか…玄関ドアや下駄箱の扉に当たらないか確認します
- 靴を置く場所が残るか…設置後に靴の脱ぎ履きスペースがなくなることがあります
- 床が水平か…傾いた土間だとガタつきます
- 介助者の立ち位置…介助が必要なら、介助者が入れる余地を残します
介護保険でのレンタル
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 区分 | 福祉用具貸与「手すり(工事を伴わないもの)」 |
| 対象 | 要支援1〜要介護5(要介護度の制限なし) |
| 費用 | 月額のレンタル料。1割〜3割負担 |
| メリット | 状態が変わったら別の機種に交換できる |
この製品はメーカー希望小売価格が174,570円(税抜158,700円)と高額ですが、レンタルなら月々数百円〜千円程度の負担で使えます。
そして買わずに借りることの価値は、状態が変わったときに交換できる点にあります。段差が上がれなくなったらステップの段数を変える、必要なくなったら返す、といった調整ができます。迷うならまずレンタルで試すのが合理的です。
よくある質問
Q. 賃貸住宅でも使えますか?
A. 使えます。工事をしないので大家さんの承諾も不要です。置き型手すりが選ばれる大きな理由のひとつです。
Q. 床が傷つきませんか?
A. 樹脂のマットが床に接するため、通常の使用では傷つきません。ただし土間に砂利があると擦れるので、設置前に掃除しておいてください。
Q. 玄関以外にも使えますか?
A. 使えます。ベッド脇の立ち上がりやトイレなど、段差のない場所用の置き型手すりもあります。用途に応じて機種を選んでください。
Q. 壁付けの手すりとどちらがいいですか?
A. 壁と下地があるなら壁付けのほうが場所を取らず、しっかりします。ただし住宅改修の20万円枠を使うことになり、着工前の申請が必要です。すぐ使いたい・工事できない・枠を残しておきたいなら置き型です。
まとめ
- 置き型手すりは工事不要で、要支援1から介護保険でレンタルできる
- ステップ台は1段あたり18cm以下になるように段数を選ぶ
- この製品は54cmまでの段差に対応
- 34.7kgという重さが安定性。軽い製品はかえって危険
- 樹脂被覆の手すりは冬に冷たくならないため、握ってもらえる
- 設置は上がる方向・ドアの開閉・靴のスペースを確認してから
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手すりを付けても、通院や買い物の付き添いには人手が要ります。介護保険では対応しきれない外出の同行や、家族が仕事で動けない時間帯を埋めたいときは、保険外の在宅介護という選択肢もあります。
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